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ワクチンアレルギー

ワクチンアレルギー

はじめに

自動車教習所で初めて車の運転をする時に何をどの順番に操作してよいのか解らない状況と同じように、犬を始めて飼った方も何をどの手順でケアーしてよいのか解らないことかと思います。今回は最初のミッションの一つでもあるワクチンについて知っておいても損のない情報を乳幼児と比較しながら概説します。

ワクチンとは?

病原体が侵入した時、体内では“尖兵部隊“がまず攻撃を開始します。たいしたことのない病原体はこれで撃退されますが、強力な病原体にはさらなる応戦が必要となります。そのうちに、その病原体のみを専門に攻撃する“特殊部隊”ができます。2度目にその病原体が体内に侵入しても、その“特殊部隊”が病原体を記憶しており、その病原体独自の防御機構が成立し、病原体が増殖する前に撃退されるのです。ワクチン(免疫)とはこの“特殊部隊”を合理的に投入することなのです。

小児の予防注射とは?

小児の定期予防接種に入るものは、BCG(結核)、ポリオ(小児麻痺)、麻疹風疹混合ワクチン(MR)、3種混合予防ワクチン(DPT=百日せき、ジフテリア、破傷風)です。予防接種法で接種を受けることが努力義務となっていた日本脳炎の予防接種については、現行のワクチンでは脳脊髄の病気を起こす可能性があるため例外(海外渡航など)を除き、厚生労働省が平成17年から接種の中止を勧告しました。

動物の予防注射とは?

日本で犬を飼っている方は狂犬病の予防注射を毎年1回受けさせる義務(第5条)があることが法律(狂犬病予防法)で決められています。法律上の話ですが、この法律を無視して犬に予防注射を受けさせなかった場合は20万円以下の罰金に処せられます(第27条二)。日本国内では1970年にネパールで感染した男性が、2006年11月16日にフィリピンで感染した男性(60代)が帰国後に狂犬病を発症したと発表されています(厚生労働省)。

 狂犬病予防注射以外のペットのワクチンとして感染症を予防するための通称“混合ワクチン”があります。混合ワクチンは人間のインフルエンザや水痘(みずぼうそう)などのような任意接種で、犬用では5種〜9種、猫用では3種〜7種までの感染症に対するワクチンがラインナップされています。
仔犬と子猫も母親から母乳として「免疫」を受け取りますが“有効期限”が「8〜14週」(ヒトの乳幼児の母子免疫は10ヶ月)です。母親からの「免疫」がワクチンを邪魔するので8週齢以前の仔犬や子猫にワクチンを接種すべきではありません!何種のワクチンが最適なのかは、生活環境や飼育方法などによって異なりますので、接種時期と合わせてホームドクターの獣医師とよく相談すると良いかもしれません。

犬のワクチン副反応の発生率は?

ワクチンは剣道に例えると「防具」、野球に例えるとキャッチャーの「マスク」や「レガース」に相当します。しかし、この「防具」や「マスク」を装備すると具合が悪くなるケースも否めません。注射部位の軽度の熱感からアレルギー反応まで様々な反応を起こすかもしれません。
軽度の場合は発熱、不活発、食欲低下などの症状が注射後1〜2日で出ることもありますが、軽度の反応は通常治療なしでも解決します。

中等度の場合は蕁麻疹が出ます。蕁麻疹はハチに刺された時を思い出してみると理解しやすいかもしれません。ハチ毒に対して皮膚の血管が反応して、激しい痛みを伴い、真っ赤に腫れあがります。動物の場合はこの蕁麻疹が唇や目の周りあるいは頚の周りの赤みや腫れとして現れます。

最も重度な反応はアナフィラキシー反応です。この反応は突然起こり呼吸困難となり生命に関わる危険性のあるアレルギー反応です。アナフィラキシー反応は狂犬病、犬コロナウイルス犬パルボウイルスそしてレプトスピラなどの不活化ワクチン(killed-virus vaccines)でより一般的です。不活化ワクチンには免疫反応を改善するために化学物質(アジュバンド)を加えてあるためワクチンのアレルギー反応のリスクも増加します。ワクチン後のアレルギー反応の免疫学的メカニズムは良く分かっておりませんが、ワクチンに含まれる牛胎児血清と蛋白安定剤(ゼラチン、カゼイン、そしてペプトン)が犬におけるワクチン接種後の即時型アレルギー反応を誘導する原因アレルゲンと考えられます。

妊娠中の動物に生ワクチンを接種すると奇形や流産が起こる危険性があるので時期をずらす事を強くお勧めします。
また犬アデノウイルス-1は青い目(blue eye)と呼ばれる目の炎症(アレルギー性ブドウ膜炎)を引き起こすことが知られています。ほとんどのワクチンは犬アデノウイルス-1に代わって犬アデノウイルス-2が含まれており、現在では殆ど皆無となっております。犬のワクチンアレルギーの発生率はウィスコンシン大学の報告によると15000分の1の確率と言われています。

人間のワクチン副反応の発生率は?

犬のワクチンアレルギーの確率が15000分の1と言われてもその確率が高いのか低いのか理解しがたい。飛行機が墜落する確率や交通事故に遭遇する確率とどちらが高いのでしょうか?人間のインフルエンザ予防接種は1976年に新しいワクチンの製造法になってからは、副作用で死亡したり重篤な後遺症になったりするケースは、100万分の1以下の確率といわれ、最も安全なワクチンの一つと認識されています。小児のポリオ生ワクチンによる麻痺の発生率は約400万分の1と言われています。

ちなみにサッカーくじ「toto」の1等当選(最高金額1億円)確率は、約160万分の1で、ロシアの宇宙ステーション「ミール」が日本に墜落して、なおかつ人に危害が及ぶ可能性は、1億分の1以下(文部科学省の報告)と言われています。さらに米国交通当局の統計によると、航空機事故が起こる確率は数10万分の1と言われています。ハイジャックに遭遇する確率はもっと低くなるでしょう。人気のある馬が勝つ確率が高いというセオリーで判断すれば競馬のオッズはとても重要となりますが、実際、一番人気の馬でも30%程度の勝率しかないと言われています。サイコロを振って「1」の目の出る確率が1/6というのは統計学上の数字であって、実際に6回振っても1の目が必ず1回は出るとは限りません。従って犬のワクチンアレルギーの発生率を航空機が墜落する確率や宝くじに当選する確率と同じ土俵で比較することはナンセンスです。飼い主さんの立場になれば起こるか起こらないかの50%でしかないのかもしれません。

ダックスにワクチンの副反応が多い理由とは?

日本ではM.ダックスにワクチン反応が起こりやすいと言われています。これは日本で飼育されている犬種の分母にM.ダックスが多いことも否めず、アメリカではワイマラナー、グレート・デン、ドーベルマンがワクチン反応が起こりやすいと言われています。実際JKC(JAPAN KENNEL CLUB ) での犬種別犬籍登録頭数(1999年〜2005年)の7年連続チャンピオン(アーネストホーストのニックネームをパクると“セブンタイムスチャンピオン”)はダックスフンドです。ちなみにこの3年間は順位不同(2位がチワワ、3位はプードル)でした。さらに過去の報告によるとワクチン副反応は年齢が若い(2〜9ヶ月齢>1〜3歳齢)ほど、体重が軽い(10kg以下>10kg以上)ほど副反応のリスクが増加すると言われています。つまり若い小型犬はワクチン接種後にワクチン関連性副作用のリスクが高いと言うことです。以上の理由から日本ではダックスにワクチン後の副反応が多いという風説が流布している所以かもしれません。ちなみにAKC(AMERICAN KENNEL CLUB ) での2005年の犬種別犬籍登録頭数ナンバーワンはラブラドール・レトリバーでした。蛇足になりますが、この数年アメリカでも小型犬の人気が定着しつつあるようです。

ワクチンアレルギー対策とは?

一年の中である一定期間だけ皮膚炎などの症状が出るタイプのアレルギー性皮膚炎の犬に対してその「一定期間」内ににワクチンを接種するとワクチンアレルギーが悪化するという報告があります。花粉などに対する季節性のアレルギーがある犬は“アレルギー症状の出ない時期”にワクチン接種をする方がリスクを減らせるかもしれません。通常、反応はワクチン接種後、数分〜数時間(24時間未満)以内に起こります。状況によっては、動物病院の待合室や駐車場の車の中で30分〜40分経過を観察すると良いかもしれません。

<参考文献>

Vet Immunol Immunopathol 104[3-4]:249-56 2005 Apr 8
Ohmori K, Masuda K, Maeda S, Kaburagi Y, Kurata K, Ohno K, Deboer DJ, Tsujimoto H, Sakaguchi M
IgE reactivity to vaccine components in dogs that developed immediate-type allergic reactions
after vaccination.Ohmori K, Masuda K, Maeda S, Kaburagi Y, Kurata K, Ohno K, Deboer DJ,Tsujimoto H, Sakaguchi M
Pfizer Animal Health. Duration of immunity in companion animals after natural infection and vaccination.
Pfizer Animal Health; June 30, 1998.

Veterinary Learning Systems. Recombinant vaccine technology. Supplement to The Compendium on Continuing
Education for the Practicing Veterinarian. 1997;19(2).


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